耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2021年1月に読んだ本

今月のようす

最近はコーヒーを控えている。毎朝レンジで牛乳を温めて、鉄分やカルシウムが配合された栄養機能食品の粉末飲料を溶かして飲む。ココア系の味は鉄分の味をごまかすのに相性が良いらしい。ミロが有名だけどAGFの「TOKETA!」も鉄分が取れておいしく、いちごオレ味も選べるのが良い。あと森永の「牛乳で飲むココア」も鉄分が多いらしくて気になる。

在宅、在宅の毎日で気分転換が難しい。ついつい翻訳ものばかり手に取ってしまうのは無意識に遠い世界を求めているからなのかなあ。

 

マイケル・オンダーチェ『戦下の淡き光』
戦下の淡き光

戦下の淡き光

 

霧深い薄暗がりを小さな灯りが少しずつ晴らしていく。記憶とも想像ともつかない語り。おとなになるにつれて世界を理解し、記憶の意味が変わっていくことそのものは特別ではないと思うけれど、ナサニエルの置かれていた境遇はやはり特殊だった。戦時下でみずから姿を消した両親。知ることを途中から拒絶した姉と、空白を埋めようとした弟。どこまでが事実なのか、それを知ったことが本当に幸いだったのかはわからない。ただ、この時代でなければ、母親のローズはこんな人生を選ぶことはなかっただろうと思う。それを良いとか悪いとか、単純に断ずることはできないにせよ。

読了日:01月05日


レイ・ブラッドベリ10月はたそがれの国』 (創元SF文庫)
10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

 

ちょうど10月から読みはじめ、19作の短編を3ヶ月かけて少しずつ読んだ。幻想、怪奇、ブラックユーモア、時にはぞっとするような、ときには物悲しくなるような要素が散りばめられ、ふっつりと見放されるような奇妙な物語の結末と、ダークトーンの夢を描いたような美しい情景文に引き込まれる。ぱらぱらと見返しただけでもそれぞれの物語の印象が蘇ってくるよう。
個人的に『大鎌』『ある老母の話』『小さな殺人者』のような、死が他者の形を取って訪れる話に特に惹かれる。本来は抗いようもない死というものに、もしかすると勝敗があり、うち勝てる望みがあるように思えるからなのかもしれない。

読了日:01月06日


ジェニファー・イーガン『ならずものがやってくる』 (ハヤカワepi文庫)

お、おもしろ〜。最初から最後までくまなく全てのページが面白い。初めは短編集かと思ったら、主となる複数の人物の様々な人生の段階を各章ごとに描いた長編だった。たとえば独身時代、思春期の頃、仕事の成功と凋落・復活、何度目かの結婚、思春期の娘から見た姿…。ある時期にはひとりの人物の本質だと思えた部分が、別の時期には全くそうではなく思えることもあるし、あるいはその逆も。そして舞台となるニューヨークという街の、よそものには想像するしかない横顔。人によって・時期によってそれは青春であり、失われた過去であり、予想外に変化し続ける未来でもある。

読了日:01月17日


カーレド・ホッセイニ君のためなら千回でも』(上・下巻) (ハヤカワepi文庫)
君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

 

以前『千の輝く太陽』を読んでいたカーレド・ホッセイニのデビュー作。こちらも『千の〜』と同じく1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻前夜から2000年代までを描く。
現在に比べればアフガニスタンが穏やかで美しかった頃でも、人種間の問題や弱者と強者は存在していた。自分の身を守ろうとするずるさ、無意識のうちに自分の中に潜んでいた差別意識のために、友だちのハッサンを見捨ててしまったアミール。でも言ってみればそれは精神的にも未成熟な子ども時代の過ちでもあった。それよりもっときつかったのは、何十年も悔やみ続けた末ハッサンの子ソーラブを引き取ろうとしたとき、ソーラブとの約束を破るようなことを口にしてしまったこと。変わり果てた母国の情勢への衝撃や父の秘密、焦りもあっただろうけど、どうあっても子どもの気持ちを思いやるのならもっと慎重になるべきだった。
めでたしめでたしの単純な「良い話」で終わらせて、贖罪をした気になるのは簡単だ。でも、悔やんでも取り戻せないものは絶対にある。相手が生きてさえいてくれれば、ずっと許しを乞い続けていくしかないのだと思う。

読了日:01月26日


ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』 (ハヤカワepi文庫)

日常から一歩はみ出したところからどんどん外れていって気づけばいつのまにか知らない場所に連れていかれてる。そんな幻想的な世界を描いた短編集。筋というより読んでいる時間をたのしむためにあるような本なのだけど、読んでいてすごくワクワクする部分と意味が分からず退屈に思える部分とがあってなかなか読み進められなかった。でもハマる人にはすごくハマっているようなんだよな~。

読了日:01月30日

 

 


読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2371ページ

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