読書

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『美しい夏』パヴェーゼ

河島英昭訳(岩波文庫)、渡辺由利子/関口英子訳(光文社古典新訳文庫)を両方読みました。というのも岩波文庫版を「夏になったら読もう~」と思ってあたためていたら、ちょうど夏に新訳が出たので……。 美しい夏 (岩波文庫 赤 714-2) 作者:パヴェーゼ 岩波書…

2026年7月に読んだ本とか

評論・エッセイ 『影の現象学』河合隼雄 『娘が母を殺すには?』三宅香帆 『「夫婦」不在社会』三宅香帆 『推したちとどう生きるか』三宅香帆 『なぜあなたの感想はふつうなのか』大島育宙 『無人島のふたり』山本文緒 小説 『どれか一つは嘘』キム・エラン…

『いい子のあくび』高瀬隼子

いい子のあくび (集英社文庫) 作者:高瀬隼子 集英社 Amazon 他者と生きるということはぶつかりやすくて傷つき傷つけられるようなことであって、そういうものでしょ、とわかったような気持ちになって安全圏にいるわたしはもうこういう不快さは忘れかけてしま…

長女に共感する ~『マンゾーニ家の人々』ナタリア・ギンズブルク

イタリア統一の重要人物といわれている小説家、アレッサンドロ・マンゾーニの家族の実際の書簡を再構成しながら小説に仕立てたという珍しい形式。 「そもそもマンゾーニって誰なんですか」となったり、やたらたくさんの人々と交流しているため誰が重要人物な…

2026年6月に読んだ本とか

6月は長々書きたいことが多くてけっこう別記事に分けました。月まとめ記事はやめて1冊1記事で統一した方がいいのか? でもこのスタイルの方が書きやすい時もあるし…と地味に毎月悩む(どっちでもいいっちゃいいのだが…)。 エッセイ 『小さい午餐』小山田浩…

『大司教に死来る』ウィラ・キャザー

大司教に死来る (須賀敦子の本棚 池澤夏樹=監修) 作者:ウィラ・キャザー 河出書房新社 Amazon 人生にとって重要な人間関係は、時系列に出現するとは限らない この小説は、各章ごとにラトゥールとの関係性を軸にその人生に現れた人々とのエピソードを書く構成…

イーディス・ウォートン『イーサン・フロム』 ~家庭が牢獄になるとき

『無垢の時代』とはうってかわって、イーサン・フロムは田舎で貧しく地味に生きており幸福を感じていなさそうな男が主人公である。『無垢の時代』のあとに読むと確かになんでこの題材にしたんだろう? となるんだけど*1夫の心が別の女に揺らいでいることに気…

村司侑『ソリティアおじさんがいた頃』感想 - わたしの人生にもソリティアがあるか -

これめっちゃ好きだった。といっても一文目から運命を感じるようなタイプの好きさではない。 というのも、わたしがこの小説を読むきっかけは芥川賞候補作品に選ばれたことであり、読む前に著者の経歴をチラ見して「おじさんが若い女性の一人称で書いた小説」…

2026年5月に読んだ本

ブリス・モンタージュ/迷える夫人/背表紙の学校/秘密の花園/日本美術とジェンダー

リュドミラ・ウリツカヤ『クコツキイの症例』~物質としての生命、はかりしれない精神

鉄のカーテンで閉ざされていた時代のソ連で、産科医の権威であったクコツキイとその一家。家族の絆と、その繋がりが切れた後の物語。血のつながらない親子、医療による中絶の是非、科学進歩における生命倫理というテーマ。生死のままならなさが、さまざまな…

イーディス・ウォートン『無垢の時代』~恋愛とは切り離せない、その周辺のこと

一見、ニューヨークの古き良き上流社会の恋愛を描いたスリリングな小説である。語り手のニューランドは、こまごまとした礼儀や形式に縛られた上流社会に皮肉な目を向けながらも、そのなかで生まれ育ったがゆえにその社会の求めるものを隅々まで知り尽くして…

2026年4月に読んだ本

横光利一/津村記久子/ウリツカヤ/ジョン・ファンテ/テヘランでロリータを読む/熊

2026年3月に読んだ本とか

屍衣にポケットはない/恐るべき緑/わたしたちの不完全な人生へ/五月 その他の短編/翻訳はおわらない/エンジェル エンジェル エンジェル

『夢宮殿』イスマイル・カダレ - システムに巻き込まれていく個人の、涙ぐましい努力

『砕かれた四月』が面白かったーと書いていたらコメントでこちらもおすすめしていただいて早速。独裁型官僚社会を経験したアルバニア人作家による作品で、勤労会社員にとっては身につまされる。 イスマイル・カダレ、もっと読みたいと思ったら同じような思い…

2026年2月に読んだ本

エデンの東/福音派/ダンシング・ガールズ/掌に眠る舞台/バーナード嬢曰く。

2026年1月に読んだ本とか

雪/砕かれた四月/彼らは廃馬を撃つ/母娘短編小説集/雪の練習生/短くて恐ろしいフィルの時代/絶対泣かない(山本文緒)/「なむ」の来歴/小説的思考のススメ

オルハン・パムク『雪』とイスマイル・カダレ『砕かれた四月』

雪(パムク)/砕かれた四月/彼らは廃馬を撃つ/母娘短編小説集/雪の練習生/短くて恐ろしいフィルの時代/絶対泣かない(山本文緒)/「なむ」の来歴

『奇術師アイゼンハイム』 – ミュージカル「イリュージョニスト」を思い返す日記

ミュージカル「イリュージョニスト」の原作というのをきっかけに知り、図書館でみつけて読みましたが……これは、完全に別物だー!! 舞台はこの短編に着想を得てモチーフを借りただけの別の物語だった。舞台版に出てきた公爵令嬢ゾフィは原作には存在もしてお…

2025年の読書ふりかえり - 好きな作家と本とか

今年読んで印象的だった本について。おすすめ本とかベストブックの選出みたいなのがいつも難しくて、今回はざっくりふりかえるので個人的な好みの開陳、本好きの雑談みたいな感じで流し見ていただければと思います。 ハン・ガン イーユン・リー リュドミラ・…

2025年11月に読んだ本とか

今月はいよいよ積読棚が入らなくなり、棚を耕していたら*1、8年ぐらい積んでいた本を発見。読み始めたら止まらなくてそのまま一気読みしました。積んでいたかいがあったな~。さてどの本でしょうか。 小説 『ピュウ』キャサリン・レイシー(井上里 訳) 『ダ…

なぜ自分の欲望が恥ずかしいのかー『ファンたちの市民社会』を読んで自分をかえりみる

『ファンたちの市民社会』という本を読みました。これをきっかけに自分の趣味にたいするスタンスについて改めて考えてみたら、掘り下げるほどの深みのない自分の幼稚さが明らかに…… ファンたちの市民社会 あなたの「欲望」を深める10章 (河出新書) 作者:渡…

2025年10月に読んだ本

小説 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 『犬のかたちをしているもの』高瀬隼子 『水たまりで息をする』高瀬楯 『誰でもない』ファン・ジョンウン(斎藤真理子 訳) 『天使の恥部』マヌエル・プイグ(安藤哲行 訳) 『海を照らす光』M・L・ス…

『おいしいごはんが食べられますように』-なぜパートさんたちが何を考えているかは語られないのか

2022年の芥川賞受賞作。ということで読まれた方も多い作品かと思うのですが、読み終わってここまで「他の人の感想を知りたい!!」と思った作品はわたしの中では珍しいかも。というのは、職場×食という一見多くの人が共感できそうな題材であるにもかかわらず…

2025年9月に読んだ本

最近、読みやすい本とか短編集ばかり読んでしまう傾向にある気がする。chatGPTにわたしの好きな本の好みを教え、ブックリストを提案してもらったら、読んだことある本と架空の本のリストしか出てこなかった…。(chatGPT、長いリストを作ってもらうと途中から…

川上未映子『夏物語』- 感想というより個人的すぎる覚書

子どもを産むか否かの選択を考えさせられる作品だと聞いていたので、すでに産んでいる身としては何となく読むのがこわくて、何年も夏が来るたび後回しにしていた本。子どもを産む理由も産まない理由も、書いてることも書いてないことも含めていろんな角度か…

2025年8月に読んだ本

最近YouTubeで本紹介を見て読書したい気分を盛り上げることが多い。わたしもやってみたい〜と思って夏休み中に家で本棚紹介ごっこをしてみたら、自分のしゃべれなさと喋り方の気持ち悪さとでギャフン!となりました… 読んだ本 新書・ノンフィクション 『「ふ…

2025年7月に読んだ本とか

最近のようす 辛いものを食べまくっていたら久しぶりに痔になり、くるしんでおります。こうも暑いと辛いものが食べたくなるけど、みなさん刺激物の取りすぎには気をつけましょうね。 写真は新潮文庫買ったらもらえたしおり 最近のようす 小説 『割れたグラス…

2025年6月に読んだ本とか

最近のようす 6月下旬からこちら、仕事に追われてしまっている。夜な夜な在宅作業しながら「時短勤務とは……」と思い、夢の中でも仕事の課題のこと考えて朝起きた瞬間げっそりする。こういうときは読んだ本も中短編やエッセイが多くなりますな〜 それでもブロ…

『回復する人間』ハン・ガン(斎藤真理子訳)

傷と回復についての短編集。ハン・ガンという人は、ほんとうにずっと人間の内面がうける傷と痛みに向き合い、だからこそ見える光を書いている。並大抵の精神力ではないのではと読むたびに思う。 回復する人間 作者:ハン・ガン 白水社 Amazon 「明るくなる前…

『初子さん』赤染晶子

表題作の「初子さん」は日常と仕事を繰り返していくことの話。一生懸命働きつづけて数年経ってしまい、さして儲かるわけでもなく、好きではじめた仕事でもいつのまにか暮らすことでせいいっぱい。初めてほめられたときの「あの時のうれしさはどこへ行ったの…