耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2023年9〜10月に読んだ本とか

この2ヶ月はしょうもない悩み事&検索に時間を溶かしていて(人生に関わったり心が重くなるような種のものでは全然ありません、念のため)、全然本を読んでなかった……。なんかそんなタイミングでした。この隔月の記事もスキップしようかな〜とも思ったけど、もはや日記みたいに書かないとなんか気持ち悪くなっちゃうので書きます。

廣野由美子氏の本を読んでいたら小説欲が回復してきたので、年末にかけてはもう少し読めたらいいな〜。

 

廣野由美子『ミステリーの人間学』

書店で廣野さんの新刊出てる〜と思って手に取ったら10年前くらいの重版だった。NHK「100分de名著」でシャーロック・ホームズの解説出演されていたのですね。

わたしは昔クリスティにハマっていた頃が現在の読書趣味の原点にある気がしているのだけど、その後ミステリー小説をいくつか読んだ際にはミステリファンの間で評価の高いものでも当たり外れがかなりあると感じていた。良し悪しではなく、あくまでもわたし自身の好みにはまるか否かという点で。つまり、トリックの目新しさや事件のセンセーショナルさに主眼をおいたものはあまり好みでないと感じていて、結局ミステリというジャンルそのものから離れてしまったのだった。

本書では“「人間性の探究」はイギリス小説の伝統であり、探偵小説においてもその例外ではない。”と繰り返し指摘されている。ミステリー小説という手法に則りながらも主題は人間性を描く系譜の一方で、そこから離れようとする流れがある、ということらしい。それならば、やみくもにミステリ好きがおすすめする本を読むよりはイギリスの小説という糸を手繰っていった方が好みの本に出会えていたのかな…とちょっと過去の読書遍歴を悔やむ気持ちである。

 

廣野由美子「シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』」

廣野氏の真の新刊はこちらでした。「なんでわたしはジェイン・エアを読んでこなかったのだろう…」という気持ちになる……。ただ、その影響力はたしかに「ジェイン・エアの娘」たちやそのまた「娘」を介してわたし自身の内面にも及ぼされているとわかる。『赤毛のアン』『若草物語』『あしながおじさん』等の物語が〈ジェイン・エアの娘〉と呼ぶべき系譜に連なるものであるという指摘、そしてこれらの文学に親しんだ人々の人格に影響し、自立心を育んだのではないかという考察で大変おもしろかった。

全体に客観的で平明な文体の本書なのだが、唯一語気が強まった(と感じられた)のがp,210の以下の文章である。

文学は、影響力が大きいからこそ、すばらしい。しかし、影響を受けている自分を客観的に引き離して見ることができなければ、それはあらぬ方向へと引っ張っていく呪縛ともなりかねないし、逆に、たんにノスタルジーに浸って愛好するだけの消費の対象に成り下がって終わることもあるだろう。その結果、当の文学作品を正当に評価することができなくなるのは、実に残念なことである。

文学研究者という立場上は当然の態度なのかもしれないが、「消費の対象に成り下がって終わる」というところ、胸に突き刺さってしまった。

でも裏を返せば、影響力が大きいからこそ、読者としては、読む者に与える影響の大きさを覚悟した物語を読みたいと思うのが当然ではないだろうか。たとえ稚拙だったとしても、自分自身の中に生じる反応をできる限り客観的に言語化し、観察することはやはり続けていたい。なんといってもそれは、読書の楽しみと隣り合わせでもあるのだから。

 

あきやあさみ『一年3セットの服で生きる「制服化」という最高の方法』

SNSやnoteを見ていると「自問自答ファッション」とか「演歌バッグ」とかいうキーワードが流れてくるし、著者さんのブログ記事は無料で読めるものも多いのでなんとなく知っている気でいたのですが、秋になってまた毎日何着るか悩みすぎていたのでついに書籍に手を出しました。やはり本としてまとまった形で読むほうが「わたしにもできるかも!やってみよう!!」という前向きな気持ちになる。

語り口はやさしいし励ましてくれるかんじなのだが、じつは言ってることは結構きびしく、自分のファッションを決めるためには徹底的に自己の欲望を掘り下げよう!!という話になる。答えが欲しかったはずなのにさらなる深みにに招待されるというか…。ただそれだけファッションとは奥深いものだよ、というところには嘘がない著者なんだなと思った。もちろん具体的な考え方の方法もあらゆる方向から提示している。

個人的に一番啓蒙されたのは、「内面に似合う服がある」というフレーズ。ファッションは社会的なものだから“正解”が自分の外側にあるような気がしてしまい、無限にインターネット通販やSNSの海をさまよう……となってしまうのだけれど。たったひとつの“正解”はないし、自分の外側で見つけたオシャレさが、必ずしも自分自身にしっくりくるとは限らない。一方で指針になるはずの「内面」さえ、日々刻々と変化していく。だからこそ常に自分に問いかけ言葉にして見直し続けることが必要なのだと。

なんかこう書くとめっぽうめんどくさいんだけど、しかしこの本を読んでいると、しっかり自分のファッションに向き合って考えるのは楽しくてワクワクすることだなぁと思わせてくれる語り口なんですよね〜。ファッション自問自答についてもまたブログかどこかに時々書けたらいいな……

 

板倉梓『瓜を破る』 1〜8

よくタイトルを見かけるので試し読みしてみたら面白くてそのまま大人買いしてしまった。頑張って懸命にもがいて生きてる全ての人へのやさしい眼差し。そういう「もがき」が必ずしも他人から見つけてもらえたり認めてもらえるわけではないけれど(むしろそんなことになったら恥ずかしくて仕方ない)、だからこそお互いの痛みが分かり合える相手がいることって本当に貴重なんだよね、大人だからこそ……。

最新8巻はレンちゃんの話をめちゃくちゃ母の目線で「お母さん絶対心配してるよ……」と思いながらよんでしまった。母の「かわいい」の言葉が娘にとっては呪いになってしまったというのが、娘にかわいいと伝える以外にはどうしようもできなかった気持ちもわかるから、悲しくて。でもちゃんとそれを娘が自分で解放できた、それだけじゃなくて受け入れることもできた、っていう終わり方がさ……このおはなし、不器用に娘を思わずにはいられない母に対してもやさしいのよね……と思って泣いちゃう。ケイタがお母さん心配してるよ、って何回も声かけてくれるのも良かった……

 

舞台感想など

sanasanagi.hatenablog.jp

 

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