耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

ル・プリアージュについて

ロンシャンのプリアージュに出会ってから、わたしのかばん人生は大きく変わってしまった。毎日仕事場に通う場合に使うバッグとして、プリアージュ以外もう考えられない。


プリアージュとは何か。都市圏の駅などで朝や夕方の通勤時間帯に道行く女性を見ていると、必ず三人ぐらいは持ち歩いている人がいるあのバッグの名称である。

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このかばんの何が良いか。それは我々が毎日持つかばんに求める五つの要素、すなわち①軽さ、②容量、③耐久性、④ファスナーで閉まる口、⑤どこに出しても恥ずかしくない見た目、を全て満たしているからに他ならない。


とにかく軽い。主にナイロンと皮からできており、装飾がほとんどないためだ。オシャレにこだわる皆さんからすれば、それは少々退屈に思えるかもしれない。たしかに学生時代のわたしなら見向きもしなかった。過去に持っていたかばんはといえば、キラキラしたラメ入りの素材でできていたり、持ち手が金属のチェーンになっていたり(いざというときには武器になりそうだった)、かばんそのものがモコモコのムートン素材になっていたり(お財布をあたためてやるつもりだったのだろう)、鍵をかけられない錠前やスタッズが飾りとして付いていたり、とにかく見た目のときめきが全てのようなかばんばかりだった。昔の恋人のような懐かしさは覚えるが、また持ちたいとは思わない。

 

社会人になり、一日中室内で座ってパソコンとにらめっこする仕事に就いた。腹痛持ちゆえに、すきなタイミングでトイレに行ける職場、という基準で就職活動をしていたため、大体希望は叶っているが、その代わり腰痛持ちになった。ただでさえ運動が嫌いなのに、運動不足と加齢のため筋肉は衰える一方である。もう重いかばんを持って通勤電車に耐えることはできない。思えば学生時代には、満員電車が嫌すぎて朝から授業に行かなくて済むよう努めていたから、どんな重いかばんを持っていても電車では座れていた。


職場ではきちんとした自分でいたいという思いもあるのだ。大人なのだから、別にふざけたかばんを持っていても何も言われないと思うけれど、そうなるとかえってふざけたかばんを持ちたくなくなってくる。機能性より目を喜ばすことを優先させたような、きらびやかなバッグよりも、シンプルかつシックで、口がパシッとファスナーで閉まる、信頼感があり、見た目以上の許容量がある鞄をわたしは持ちたい。

こうして考えてみると鞄とは、こうありたいと思う自分の鑑のようなものであり、ロンシャンのプリアージュとは一社会人として働くわたしの、なりたい姿の象徴なのかもしれない。


ところで、こんなに大好きなプリアージュ、わたしはハンドバッグサイズとトートバッグサイズ、そして旅行バッグサイズを持っているが、正直旅行バッグサイズは大きすぎるので不要だったかなと思っている。ふだんの通勤だけならハンドバッグサイズで良いし、ちょっとした旅行やプールに行くのでも、トートバッグサイズで行けてしまう。長期旅行ならキャリーバッグを使うのだし。旅行バッグサイズは大きすぎて、用途がタカラジェンヌのお稽古バッグしか思いつかない。大は小を兼ねるというが、大きすぎるバッグは取り回しも煩わしく、バッグの中身がごちゃごちゃになってしまうし、全身のバランスも難しい。ゴルフや帰省など、車で移動する人なら便利なのかもしれない。