耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

身体に振り回されているなあ、と今月も思う。

お腹が痛いが気分は晴れやか。少なくともきのうまでに比べれば。

先週は最悪だった。何をしても楽しいと思えない。客観的に見れば何不自由ない幸福な生活なのはわかっているが、生きる意味が分からない…などと、考えても仕方のないことを職場のトイレで延々と考えている。何を食べても美味しいと思えないのに食べ物を口に運び続けている。外に出れば熱波。あと何年こんな生活を続ければ解放されるのだろうか。踏切の遮断機が目の前に下りてくる。

わたしは他人と比べて楽観的な方だと思っているけど、月経前の1週間だけは別だ。ぜんぜんなんともない月もあるけれど、大概はネガティブの波がゆるやかに脳を侵す。嫌なのは自分でも気づかないうちに、少しずつ気分が落ち込んでいくことだ。ついこの前まで明るく笑っていたはずなのに、いつのまにか孤独の谷にうずくまっている。どのようにしたら抜け出せるのか分からない。できるのはただ這うようにして日常を過ごし、やりすごすことだけ。それでも部屋は散らかり、動きは鈍り、お気に入りだった何もかもを投げ捨てたい。それなのに身体が動かない。

するとある日突然、鈍い頭痛と下腹部の違和感に気づく。わたしの内臓が血を流す。堰が切れたかのように、胸の奥からどす黒い靄がかき消えていく。出血する内臓がじんじんと痛むが、きのうまでの暗い世界に比べれば、本来の自分の精神を取り戻せたと思えるだけまだマシだ。立っているのも耐えがたいほどの体調があと2日も続けば全てから解放されると、今のわたしはもう知っている。