坊やがインフルエンザで家にこもっている間、順調にアンパンマンの過去作や映画を消化していたのですが、もしかしたらうちの坊やはばいきんまん推しなのかもしれない……。
というか正確には、ばいきんまん本人というよりはばいきんまんのテーマソングである「いくぞ!ばいきんまん」が好きみたいです。
ばいきんまんがばいきん基地でバイキンメカを作る時、かびるんるんたちをバックダンサーとして従えながらこの「いくぞ!ばいきんまん」を歌うシーンがしばしばあるんですが、見てもらえればわかると思うんですけどめっちゃテンション上がる。このヴィランがぶちあげるシーンのよさが「解ってる」坊や、そのうちいっしょにミュージカルみにいきたい。
それはさておき今年のアンパンマン映画はばいきんまんがメインキャラということで大変たのしみにしています。令和だからなのか、この映画に合わせてなのかは分からないんですが、通常放送のアンパンマンも意外と「悪事を働くばいきんまんをアンパンマンがアンパンチしてめでたし」ではない展開がけっこうあります。わたしからすると映画だけ仲間になるジャイアンより全然人間味があると思う(人間じゃないけど)
ばいきんまんには苦手とするキャラが何人かいて(マダム・ナン、オクラちゃんなど)、この人たちはばいきんまんよりめっちゃ強いとかいうわけではなく、むしろその逆で、ばいきんまんに対して常に愛をもって接するんですね。悪さをするなんて思ってみてもない。一方ばいきんまんは自分が悪者だという自意識があるので、愛されると自己イメージが崩壊してパニックになり自滅してしまうのです。
このキャラたちが出てくる回は展開上ばいきんまんが悪さをできず、ばいきんまんがお野菜とかを分け与えてもらえてほっこりした雰囲気の中エンディングを迎えるという展開も多くみられ、わたしも坊やもアンパンチする回よりもそういった回を好んで見る傾向にあります。*1
あとわたしが大好きなのはバイキンバタコ回。(と勝手にジャンル名をつけている)最近までamazonプライムのアンパンマンチャンネルで見られた2015/2/27放送『バタコさんのひなまつり』、最近放送(関西では2024/4/24)の『バタコさんとそらとぶベッドくん』のように、アンパンマンやジャムおじさんが不在のときにバタコさんがばいきんまんと遭遇してしまう回がまれにあるのです。
実はバタコさんもジャムおじさんも、ばいきんまんが何もしてないのに存在するだけで懲らしめようとはしないんですね。あくまでばいきんまんの「悪事」に対しての罰を与えることはあるけれども。だからばいきんまんにたまたま出会ったバタコさんは、手元にあるパンをなんのためらいもなくばいきんまんに差し出すのです。それは「困っている人のためのパン」だから。
『バタコさんとそらとぶベッドくん』では、バイキンマンがピクニック中のバタコさんを襲った拍子にバイキンUFOが壊れ、バタコさんとばいきんまんが二人っきりで雪山で遭難してしまいます。空腹と寒さで震えるばいきんまんに、温かいお茶とパンを差し出し自分のマフラーをかけてやるバタコ。やがて不思議な力に導かれて〈そらとぶベッドくん〉が二人のもとを訪れると、どこかへ飛ばされてしまったバイキンUFOを探すという名目で、ふたりは空飛ぶベッドに乗り世界のあちこちを飛びまわる。砂漠のランタン祭りを訪れて幻想的な雰囲気に包まれたり、ドレミファじまのオーケストラに一緒に耳を澄ませて時を過ごす……。まるで二次創作か?と思われるような回がほんとうにあるのです。
最後にばいきんまんは、自分からだとわからないよう、パン工場の戸口にこっそりと、マフラーとパンのお返しを置いていく……。「いったい誰が?」といぶかしむアンパンマンたちをよそに、バタコだけがその正体に気づいて微笑むのです。アンパンチで飛ばされるだけがばいきんまんじゃない、このパターンのシナリオを初めて見た瞬間に、わたしのなかのばいきんまん萌えは確固たるものとなりました。
今週のお題「名作」
ここまででお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、坊やよりわたしのほうが結構アンパンマンというコンテンツにハマりつつあり、そうしたときに次に関心が向くのがばいきんまん声優の中尾隆聖さんです。
中尾さんといえばばいきんまんが圧倒的代表作ですが、もちろん他にも有名作に多数出演しており、我々世代の子どものとき見ていた作品ではドラゴンボールのフリーザ様やNHKおかあさんといっしょ人形劇のイメージがあると思います。ただわたしが中尾さんの声に惚れ込んだのはそれ以上に、『アボンリーへの道』という海外ドラマの吹替がきっかけでした。
『アボンリーへの道』、過去に何度かNHKで放送されていたためご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、『赤毛のアン』で有名なL.M.モンゴメリ著『ストーリーガール』というシリーズが原作で、アンと同じくカナダのプリンス・エドワード島にあるアボンリーという村が舞台の物語です。
シーズン1では10歳そこそこだったメインキャストの子どもたちが成長し、大人になるまでの過程を、多くが1話完結の形式で描きながらシーズン7まで続いたドラマ。美しい舞台設定や牧歌的な雰囲気もさることながら、人の絆としがらみ、子どもたちや彼らを見守る人びとの成長といった普遍的な物語を見事な脚本で描いているハートフルな作品である一方、腹が痛くなるほど笑えるドタバタコメディでもあり、毎話たのしみに見ながら泣いたり笑ったり、思春期の頃にこのドラマに出会ったわたしにとって人生の根底にあるといってもいい作品です。
母を亡くしひとりぼっちでアボンリーへやってきた主人公セーラ……より、最初はちょっとセーラをいじめてた従姉妹の子フェリシティがわたしの注目ポイントでした。放送当時おそらく13歳ぐらいで観ていたわたしと同年代。このフェリシティがやがて成長し、セーラとの関係も大人になるにつれて少しずつ変容し、なんなら後半シーズンからはほとんどフェリシティがヒロインのようになり、最後にはほとんどドラマに出てこなくなったセーラ*2のかわりに最終回はフェリシティの結婚式で幕を閉じるという構成になっておるのですが、なにをかくそうこのフェリシティが恋に落ちる相手ガス・パイクの吹替声優を担当していたのが中尾隆聖さんだったんですね〜。
シーズン4・5あたりからとにかくやきもきしながらフェリシティとガス・パイクの恋と成長を見守っていたわたし。フェリシティが家族内ではやんちゃな弟のせいでちょっと損な目にあうことも多い長女という役回りなのも自分と同じ!と共感を呼び、すっかり感情移入。そしていつしかわたしもガス・パイクに恋してしまったのでした。
中尾さんといえば特徴的な声、本国の俳優さんの声とイメージが合ってるかというのは賛否両論あったらしいものの、わたしの中ではガス・パイクはあの声しか考えられないです。海の方からきた、素性も身分もわからない、清潔かどうかも知れない、でも心に流れるものはあたたかく、ひたむきにフェリシティに釣り合うよう努力する青年……
そんなわけでまた見たくなって、今実家にあるはずのDVDを探しているところです。一時期Amazonプライムでも見られたみたいなんだけど気づいたらもう見れなくなっているので……。ただ7シーズン分の全巻セットDVDが3万5千円くらいで買えるのでDVD買い直してもいいのかもなあ。見る時間あるのか……
中尾さんの話とはズレますが、わたしがこのドラマと出会った2000年代半ば当時は今みたいにSNSはなかったものの、インターネットには触れていて。学校じゃだれも見てない、深夜2時にNHKで再放送してる昔の海外ドラマを、インターネットの向こうでは深い思い入れをもって毎話たのしみにみてる人がいたのを見つけたときは衝撃でした。ブログすらまだない時代だったけれど、個人サイトに全話感想をアップしてる方がいて、その方の文才とツッコミのセンスがまた大好きで、更新されるたびにめっちゃ面白くてニヤニヤしながら読んでました。あの方、まだどこかで何か文章書いてらっしゃるのかな〜。