耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2023年11〜12月に読んだ本とか(1)~現代編~

まだ昨年の話をしていきます。

 

最近のようす

11〜12月はとにかくアンパンマンをめちゃくちゃ見ていた。テレビついてる時はとにかくずっとアンパンマン、テレビついてない時はアンパンマンの絵本、物語に飽きたら『アンパンマンをさがせ!』という本でアンパンマンを捜し、そうこうしているうちに毎回とっかえひっかえ登場するゲストキャラ達にも興味がわいてきて『アンパンマン大図鑑』というキャラクターずかんまで購入する始末。

さすが息の長いジャンルだけあって、原作者がすでに逝去されているのにもかかわらず消化しきれないくらい次々と見るもの読むものがあるのがたのしい。アンパンマンはかわいいしばいきんまんもいとおしい。しょくぱんまんはちょっとうさんくさい。

 

大人の本については、11〜12月は気の赴くままに読んでいたらなんとなくテーマっぽいものがありそうな読書記録。長くなってしまったため2記事に分かれます。

 

人は何を考えて買い物をしているかという本

9~10月に本を全然読まずに夜な夜なオンラインストアをずーーーっと見つめてしまったことを反省し、世の中の人はどういう心構えで買い物しているんやということが書いてある本を読みたくて模索していた。

 

文學界 2021年8月号

服に悩みすぎて「人はなぜ服を着るのか……」みたいな思考モードにさえ至りそうだったとき、それなのに生活は待ったなしで服は毎日着なければならず、そんなタイミングで結構前に買っていたこの特集が目に止まり。結局服にかんしては「そうか、自分のアイデンティティのために服を着たっていいんだ」と思えるようになり、悩みが鎮静化した気がする。いや何着ればいいのか悩みつづけてはいるんですが。実用とオシャレとどっちを取るべきかとか、そもそも今のわたしにとってのオシャレとは?とかぐるぐる考えていたのだけどそのどちらも大事なのが今の自分だね、という気持ちになった。具体的にどの記事を読んでそうなったとも言えないのだが。印象的だったのはケイスケヨシダとかコトハヨコザワのデザイナーさんのエッセイかなあ。決して単純でも単一的でもないファッションとの付き合い方を読めてよかった。

 

岸本葉子『「捨てなきゃ」と言いながら買っている』

急に人のお買い物エッセイが読みたい!となり、検索して読んだもの。ちょっとした身の回りのものを買うのにも値段と機能を勘案して類似品と比べて、ウンウン唸って悩んでやっと決断して買ったのに、使いはじめるとやっぱりちょっとだけ不満な点がある…みたいなのってどうしてもなくならないですよね……そうですよね…。そしてそれをいちいち買い替えてアップデートしていけば、いつかはきっと理想に囲まれた素敵な生活が待っている気がするが、そこまでする気力はない組のわたしたち。そういうもんですよね。という気持ちにさせられるエッセイであった。

あとネットショッピングの難しさ。この本にもちょこちょこ返品のエピソードが出てくるけれど、返品送料を店側が負担するなどして返品OKの雰囲気を出していたりするにもかかわらず、どこまで平然と返品できるかってなんか性格が出るものだなあ。ちなみにわたしは返品可の商品は気に入らなければ結構さくっと返品してしまう人間です。

 

キーボードなんて何でもいいと思ってた

booth.pm

これも買い物エッセイが読みたい気分のときにSNSで見かけて。いろんな文筆家さんにインタビュー形式で執筆ツールの話を聞く同人誌なんですがめちゃくちゃおもしろかった。そうそう、わたしもちょうど東プレのリアルフォースが気になっていたんですよ〜!!と思いながら。しかし読んだ結果、しがないEXCEL使い会社員のわたしは文筆業の方々ほどめちゃくちゃ打鍵をしているわけでもないなぁと気づき、高級キーボードへの道からは逆に遠ざかりました。ただし人のお仕事道具へのこだわりを読めるという着眼点の時点で面白く、ツールが実は書かれているものの空気感にも影響しているのではないかみたいな話になっていくのも感覚的に納得感があった。

 

最高のおうちオフィスではたらく ~快適なリモートワーク環境の作り方~

上記のキーボード本で紹介されていた別の同人誌。こちらの方の方が業種は近くて色々参考になった。というか買いたくなった。お買い物日記の記事にもちらっと触れたのですが、ガンガン課金したものを紹介するいきおいがすごくてわたしも釣られ買いをしてしまった。

 

新川帆立『帆立の詫び状 てんやわんや編』

上記のキーボード本にも登場する書評家の三宅香帆さんがSNSで紹介されていて読んだエッセイなのですが、バッグへの熱い思いを綴った文章がたしかに名文。そうそう街中で見かける女の子たちが楽しそうにバッグ持ってるのを見るのってめっちゃいいんですよね。高そうなブランドバッグもいいし質実剛健なバッグもよい。他の人がどんなバッグを持っているか気になったことのある人ならきっと共感する文なのではないだろうか。わたしもいつか粋を極めたバッグコレクションを持ちたいものです……

 

26歳会社員、絵画を買ってみた

複製画とかはよく壁に飾っているのだが、いつか本物のアートを飾ってみたいというあこがれがあり…とはいえ本書の中で言われているように本物には本物ならではのパワーがある、だからこそ生半可な気持ちでは家に迎えることはできないなーとも思っていて。ただ、まずは美術館のほかの選択肢として画廊をみにいく、ということを捉えてもいいのかなと思えた。

というかたまに街中で遭遇する、「絵を飾っていて誰でも入っていいように見えるけどちょっと入るには緊張する、でも入ってはいけないこともなさそう」というあの小さな場所は、あれが画廊だったのか……。この本で紹介されているのは銀座や東京が中心なのですが、調べてみるとわたしの行動範囲内にも小規模な画廊が存在していて、もっとふらっと足を運んでみたくなった。気楽に買えないけど気楽に行けるのは、百貨店の上の方のフロアとかにもあるな。

 

その他小説

朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』

先述のキーボード本を読んで朱野帰子さんの本がもっと読みたくなっていたところ、本屋で文庫が平積みになっていたのを発見。定時で帰るマンだった結衣がヤバ案件に巻き込まれていつのまにか残業時間をふやしていき、次第に残業前提の生活に身体が順応していく感じとかめっちゃリアルなんですよね…。わたし自身も新卒のときから何を措いても早く帰りたいと思いながら仕事し続けている人間なのだけど、それって結局他の人に仕事押し付けているだけなのでは?みたいな葛藤は拭えない。そしてこれからは早く帰るのを実践して背中を見せるフェーズから、実際に業務調整をしてメンバーを早く帰らせる立場にならなきゃいけないフェーズなんだよなあ…と思うとふぇぇとなるのであった。

そういえば『対岸の家事』でも思ったけど、この方の小説はエンタメなのに明確な悪役をコテンパンに叩きのめす話ではなく、その悪の中にも誰もが少しは共感できそうな弱さを描き、そこを包み込んでくれる主人公なのが読みやすい理由なんだと思う。コテンパンにする系の小説はわたし苦手なので……

ただ、さすがにイチ会社員のくせに仕事のために死ぬとか口に出して言う人は、もはや少々滑稽じみて見える。少し前の話だからなのか、むしろこの本がドラマ化され流行ったことも含めで世の中の空気感に変化が生まれたからなのか。もちろん小説だからキャラもデフォルメしているというのもあるのだろうけども。とはいえ自分の仕事場をよく見まわしてみると、言語化してないから本人さえ気づいてないだけで、やってることは「仕事のために死ぬ」の体現でしかない人は山ほどいる気もするな………。

 

マーガレット・アトウッド『青ひげの卵』

誰でも替えのきく若い女であることを止め、生身の人間としての自分として生きなければいけないと気がついたときから、こういう作品に惹かれるようになった気がする。どこにでも転がっていそうな誰かの人生の一部分が語りの力で切り取られ、距離を取り、悲喜劇のようになる一瞬。アトウッドの短編集、長編のディストピア小説よりも読みやすく、切れ味鋭いソリッドな印象の心理描写が好みだった。