耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2017年1月の読書メーター

年末になるとその年に読んだ本の感想の記録を一つの記事にまとめています。

読書記録には読書メーターというWEBサービスを利用しています。

読書メーターTwitter同様、一度に投稿できる文字数に制限があり、制限字数以上に書きたいときはコメント欄にまではみ出して書いています。

これがブログ記事用にまとめたときには反映されず、手動で付け足していたら面倒くさかったため、2017年からは月ごとにこまめにまとめを作ろうと思ったのでした。

思ってはいたものの作らないまま、驚いたことにもう3月であります。

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1月は昨年末から持ち越していた『戦争と平和』を読了しました。

正直BBC制作のドラマ版を見て人物の名前とイメージを一致させていなければ、私の力量ではちょっと読み進めるのがきつかった気もします。

しかし、映像からは読み取りきれない登場人物の葛藤や苦悩を言葉で追うことができたのはやはり文学の醍醐味でした。

ドラマでアンドレイ・ボルコンスキイ公爵を演じていた英国人俳優のジェームズ・ノートンは(どことなく城田優さんに似ていると個人的には思っており、)とても私好みのハンサムでした。


2017年1月の読書メーター

読んだ本の数:4冊

読んだページ数:1606ページ

戦争と平和〈4〉 (新潮文庫)戦争と平和〈4〉 (新潮文庫)感想

時折、小説の中のある登場人物につよい感銘を与えられることがあります。それは単なる善行や自己犠牲の精神のためではなく、そのひとの性質に自分に近しいものを感じ、そのひとの感情に共感を寄せ、そしてそのひとの生活の中で行う思考や行動が、私にとって自然な敬意を湧かせるものだからです。『戦争と平和』で私はそうした人物を見つけることができました。それがマリヤ・ボルコンスキイでした。

たとえば一人の人物からそうした魅力を感じ取ることができるのは、この長大な小説に登場するありとあらゆる人物の些細な行動、そしてその行動を引き起こした理由が細やかに描写されているがゆえです。この本を構成しているその全ての要素がそうあるべくしてあったということが、エピローグの最終節を読了したとき、強い感動とともに心に迫ってきました。歴史上の人物であれ身近なだれかであれ、人間一人ひとりの行動を観察し、その行動が生まれ出た「自由」な意志と「必然」的原則を考えたとき、私たちは人間とこの世界が、身体では知覚できないまま隷属し続けている無限なるものの存在を知ることになるのです。

読了日:1月23日 著者:トルストイ


ナラタージュ (角川文庫)ナラタージュ (角川文庫)感想

10代を題材にした小説を読むと体調が悪くなることがたまにあるのですが、本書もそうでした。後半からの重い展開よりもむしろ前半。リアルで自然な青春生活が描写される中、輝きの中に時折かすめる不安の影が、なめらかに見えた肌の小さなささくれのように私自身の記憶を不意に刺激してきます。意味も理由もなく不安定だった頃のことを。だからこそ後半、不安の理由が明かされてぶつかりあう激しさにはむしろほっとしましたし、ぶつかることのできなかった者が去っていく展開には、納得はできないものの物語の必然性を感じました。

読了日:1月23日 著者:島本理生


聖女伝説 (ちくま文庫)聖女伝説 (ちくま文庫)感想

解説で「視線が紙の上をツルツルすべっていった」と書かれていたので、この本に出会って驚いて茫然としているのは私ひとりだけではないのだと思いました。複雑なパッチワークのアートを見せつけられたかのように圧倒され、なんとか気を取り直してその材料を一つ一つじっくりと分解してみようとすると、その材質の奇妙な選ばれかたにいちいちギョッとし、なのにおもしろくてたまらない。結局気づいたらことばの力にずるずると引きずられており、一文が次の一文を呼びよせ、絡まるように連関して私の覚えている世界の物事を切り分けます。

読了日:1月25日 著者:多和田葉子


ビリジアン (河出文庫)ビリジアン (河出文庫)感想

気がつくと窓が開いていて、その反対側もどこかが開いていて、風が勢いよく通り抜けている。「わたし」が通り抜けてきた場面が時系列でなく並べ立てられる。読む私は「わたし」ではないのに、感じている懐かしさを想像し、経験したこともない思い出を振り返る。語る「わたし」はどこにいたのかと思ったら、解説がものすごくわかりやすくて助かった。

読了日:1月30日 著者:柴崎友香

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