耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

3月に読んだ本

3月は『八月の光』に多くの時間を割きました。

失敗したなあと思ったのは、この本を通勤時の「持ち歩き本」にしてしまったこと。

電車や昼休みなどの細切れの時間に少しずつ読み進めるというよりは、

ソファの中に身をうずめてじっくりと読めるタイミングに読むべきだったかなと。

リーナを直線、クリスマスを円環、ハイタワー師を点に見立てた解説には膝を打ちました。

彩瀬まるさんの『骨を彩る』は短編集で、一篇をちょうどお昼休みの40分間で読み切ることができたので、

分量という点からいえば、通勤本には適していたように思います。

ただ、収録作すべてのクオリティが本当に高く、どれを読んでも最後に込み上げてくるものがあるので、

職場のデスクで涙をこらえるのが大変でした。

3月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1545

骨を彩る (幻冬舎文庫)骨を彩る (幻冬舎文庫)感想
こういう本に出会うために、小説を読んでいるんだな、と思えました。人間だからいろいろある、の「いろいろ」を丹念に追っていく。当然のことみたいに、自分だけの荷物を背負って歩いている人たち。骨まで染みた飢餓を肩代わりすることはできなくても、踏み込んで関わって想像をめぐらして、共に見る景色が美しいものであって欲しい。著者の祝福の声が聞こえるような一冊です。
読了日:03月31日 著者:彩瀬 まる
八月の光(下) (岩波文庫)八月の光(下) (岩波文庫)感想
この小説の構造をを俯瞰することは私にとって難解でした。目を焼く陽光のように強烈な文章の美しさが胸を突くこともあれば、あまりにも長いセンテンスを読み切る前に眠気が瞼を重くすることもありました。南北戦争直後のアメリカ南部、キリスト教の信仰と戒律に強く拘束され生活する人の心情を理解することもまた困難でした。男と女、親と子、個と集団、神と人間、愛するものと愛されるもの、その間にある対立の類型をあてはめてみようとすれば、残酷な断絶が用意されている。物語の最初と最後がリーナの遠い旅路であったことが救いでした。
読了日:03月22日 著者:フォークナー
死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)感想
誰でも死ぬのになぜか、自分だけは死なないような気がしている。死を常に意識しながら生きることはできないから。死ぬ方法を選ぶことはできないが、人が死ぬときにひとしく踏むであろう段階のことを知れば、見送るときも自分の番でもすこしは良いものにできるだろう。死はタブーではない。死にも生にもあらかじめ意味はないのは事実だが、意味を与えることはできると思う。
読了日:03月21日 著者:エリザベス キューブラー・ロス
八月の光(上) (岩波文庫)八月の光(上) (岩波文庫)
読了日:03月05日 著者:フォークナー

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