耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

映画「ウィキッド」(前編)

とにかく2幕早く!!という気持ち!!!!観にきた人みんなこの3時間近く映画がっつり観てエルファバとグリンダの決意をしっかり見守ったあげく「つづく」ってなるって分かってたのかな??大丈夫ですかね?

 

▼以下、かなりネタバレ

 

 

 

なんか古参ファンの方が冒頭から泣いてるっていうのは聞いてて、これまで散々延期になってきた映画がついにこのキャストで実現!みたいな積もり積もった想いがあって涙してるみたいな話かと思ってたんですよ。まあそれも多分にあると思うんだけど、そういう思い入れまではないウィキッドにわかの私も初っ端から泣きました。初めからオズの国の風景とそこに暮らす人々の暮らしの風景が描かれていて、エルファバが「孤独に生きてきた」っていうのがどういうことなのか想像させられてしまって。独自の文化があって幸せそうで美しい風景画の一部のような素敵な人々の暮らし。一目であこがれてしまう人々のなかに、入りたくても、入れない、自分の存在がただそこにあるだけで冷たい目を向けられる、それが差別ってことなんだけど、わたしはそれが本当にはどんな気持ちのすることなのか、想像できてないんだなと思いました。こんなに美しい世界があるのに自分は疎外されている。美しい世界の住人のひとりひとりの顔が見えた上で、そのなかで理由もなく憎まれながら生きるという恐怖を。

冒頭のシーンでガリンダが思い出を語り始めるところと(あそこでフラッシュバックを入れるのがなんとも涙こみあげポイント)、例の一番大事なダンスフロアのシーン、それからピンクの花を髪に飾ってあげるシーンでFor Goodのフレーズが流れるのもいちいち泣いてしまうのでした。もちろんシーンの雰囲気にあった音楽であるということは大前提で、あくまでもエルファバとグリンダの物語なんですよというサイン。この前編、全てがFor Goodのためにあるとこれらによって確信したので、余計に2幕はやく見せてほしい〜!!

シンシア・エリヴォさんってカラーパープルのパフォーマンスの噂などから歌い上げDIVAみたいなイメージを勝手ながらもっていたのですが、今回の映画では「I’m not that girl」あたりの控えめながら切なさの滲む歌唱や、ダンスフロアでひとりぼっちで涙こらえてるところなども、繊細な心が傷つけられた表情に胸が揺さぶられた。特にラストのオズの城で衛兵に追い詰められるあたりで、マダム・モリブルのアナウンスメントが自分を名指しで下げるところ、ここでもやっぱり悲しそうな表情をしていて。たとえ幼いころから愛されなくて、周りから疎外される環境にあったとしても、心ない言葉を投げつけられるのに慣れることは決してない。ましてや一度は認めてもらえたと感じた相手だったのに。何度でも何度でも傷つけられつづける。彼女は決してずっと強かったわけじゃないのだと。

Wizard and I はわたしは舞台版だと結構流してしまってたというか、エルファバが新生活にわくわくするみたいな感覚だけ受け取っていたんだけど、彼女はもっと野心的な妄想もふくらませてるし、まだみぬ「オズの魔法使い陛下」への期待もここでめちゃくちゃ高まっている。だからこそオズの陛下への期待が裏切られた瞬間のあの爆発的な怒りがうまれる、一幕ラストへの布石だったんだなあと。

アリアナ・グランデのグリンダもめちゃくちゃ似合ってたな〜。もちろん観る前から彼女のスクールカースト上位女子っぽさは絶対ぴったりやろとは予想してたけど、思った以上にコミカルな雰囲気もあったというか、グリンダという人をリアルに再現しつつも「キラキラ女子」的なキャラクターを斜めに見る視線も含んだ演技になっている感じがとてもよかったんですよね。フィエロと2人でいちゃつくシーンなどにみられる、恋愛を性別役割で演じることそのものを茶化している雰囲気とか。改名のシーンはなぜ舞台版ではないのかと思うくらい重要だと思いました。グリンダにとってもフィエロへの思いは彼女なりに真剣なはずなのに、真摯に自分をさらけだすのではなく見た目を取り繕ってPopularであることを選んでしまう。Popularであることが彼女の思う彼女自身の最大の長所だから。そのことで結局大事なものを失ってしまうのがグリンダという人の弱さ。観ている我々にとっては実は魅力でもあるのだけれど。

フィエロについては2幕の方が出番多いし、わたしはストーリー抜きにするとウィキッドで一番好きなのがAs Long As You're Mineというエルファバとフィエロの曲なのでめっちゃ楽しみ〜!という感じなのですが、今回の前編に関しては馬と気心知れた友達の雰囲気でしゃべってるのが良かったですよね~。舞台版だとスルーしてたけどよく考えたら動物たちへの差別と抑圧がモチーフとしてあるのだからそりゃ馬もしゃべるであろう。その後の展開でフィエロが何故すぐさまライオンを救う行動をとれたのか、それはもともと動物と心を通じ合わせてる人間だから、という筋道が通っている。原作小説版だと元からある描写なんですかね? エルファバが彼を好きになるのは別に王子様でキラキラしてて素敵だからというだけではないし、彼女に感化されたからというだけでもない。フィエロの持ち前の人間味の部分も感じられてよかったな〜。

そんなこんなで充実感のものすごい映画化ですが、全体通じて上映時間が長すぎるというのはやはり難点かもしれない……生理現象がどうしてもあり。3月末なのに外がめちゃくちゃ寒い日で、暖房が効き過ぎてたのも結構つらかった。封切りから数週間経って観に行ったので、周りの人がミュージカルファンじゃなさそうな人が多く、一番大事なDefying Gravityで集中力切れてそうな空気を感じたので心底もったいなかったな。でも個人的には正直日常学園パートとかはもっと観たいという思いすらある(あのWhat Is This Feelingsでミュージックビデオ的に断片的にうつされるあたりとか)。だがそこは二次創作の範疇であろう…。配信はじまったらあのへん一時停止しながらじろじろ観たいですね…。

 

 

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