耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

最近のようす

もうすぐ勤めている会社から出ている在宅勤務指示が解除されそうで、そのことが憂鬱だ。NHKの「ダーウィンが来た!」を見ていたら、ボツワナにいるリカオンという肉食動物は、群れで生活しており、その日のメンバーのやる気の有無で狩りに出かけるかどうかを決めるらしい。人間だってできるだけ家にいたい人と家を出て生活の区切りをつけたい人がいる。個人の事情を、上にいるだれかが、あるいは、属している集団の総意が、考慮する、とかではなく、本人の意思が優先される集団になればいいのに。なればいいのに、というか、わたしが属していないだけで、個人の自律能力の高さが信頼されている集団はどこかに存在しているのだろう。でも、どこにあるのかわからない。それ以前に、どうすれば自分がその集団に属する資格のある人間になれるのかを考えなくてはならない。そう思うと、もう面倒だから会社に行こう、となってくる。

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リカオン

 

仕事について

在宅勤務をしていて、仕事が厭という気分の90%は、「外に出たくない」だけだったということに気がついた。残りの10%は「朝起きるのが嫌」と「人と接したくない」が半々くらい。在宅でも9時始業して、毎日朝夕にチームメンバーと連絡を取るというのは守っているので、朝は起きなければいけないし人と接しなければならないのだが、そうだとしても仕事に対する気の持ちようはかなり楽になった。

そのぶん、たまに「人と接する」ことのハードルがめちゃくちゃ上がっている。たぶんわたしは人と会話するのに何段階ものギアの切り替えが必要なのだ。

ふだんなら、出社時点で顔を見る→あいさつ→会議室に集合→あたりさわりのない雑談→本題 というように、少しずつエンジンを加速するようにコミュニケーションをとっていたのに、家では会議が始まった瞬間、停止状態から一気にトップギアにまで加速しなければならない。ねぼけた声で会議を始めるわけにはいかないので、開始の数十分前から少しずつ準備をするわけだが、人と話す気分にまで自分のテンションを急激にあげようとすると、足の裏とてのひらから大量に汗が出てくる。最近あたたかくなってきたから余計にだ。会議が終わるとマウスとスリッパがびしゃびしゃになっている。誇張ではなくマウスに水滴がついている。

そんなかんじなので、取引先のお客さんとの会議などはおそろしくてしかたなく、始める前に進行と話すべき内容をじっさいに声に出しながらシミュレーションし、不安事項をひとつずつつぶしている。家でやるがゆえに緊張する会議だが、逆に家なので声に出しながら準備できるのはよい。いずれにせよオフィスで会議する場合でも事前準備は必要だったし、声に出して読めば資料を黙視確認しているだけでは気づけなかった課題などに気づけるので、むしろ質は高まっているかもしれない。

しかし会議が終わってしまうと達成感がものすごく、その日の仕事はもうほとんどやり遂げたよねみたいな気分になっている。そうなると、会社なら他の人の目があるからなんとかやっていた仕事をとてもスローリーにやることになり、端的にいうとめちゃくちゃだらける。もしわたしが複数の取引先とのやりとりが主の営業職などだったら、こなしきれずに業務が停滞しているだろう。営業じゃなくてよかった。

まあ、自分のストレスが対人関係にあることは承知で、人とのかかわりを出来るだけ減らしたいから今の職種を選んでいたので、その選択は誤っていなかったとも言える。

 

外見について

化粧をしないで外に出てもぜんぜん平気になった。でもこれは自粛生活のためだけではなく、結婚して他人と生活している状態に慣れたことも要因だと思う。あとマスクをしているということも。いまやわたしの顔をわたしより見ていると思われる夫に毎日すっぴんで相対しており、それが受け入れられているという感覚(それは錯覚かもしれないが)があるため、化粧が重要でなくなっている。いまわたしが都内で一人暮らしをしていたら同じように感じていたかはわからない。

そんなわけで鏡すらほとんど見なくなったわたしだが、じぶんのからだにキラキラした色をのせる愉しみというのは手放せないでいる。

具体的には、つめを自分で塗るようになった。ずっとネイルサロンでジェルネイルを施してもらっていたのだけど、ネイルサロンも営業を自粛しているから、伸びてきた部分を自分で削ってマニキュアを塗る。

すると、以前とくらべて自分のつめの形が美しく変わっていることに気がついた。少なくも高校生ぐらいのときの、爪先も根本もいびつで、ストレスを感じるたびにさかむけを自分でひきちぎって、どんどん自分のつめの形をゆがめていたころよりは。つめがベッドだとして、色がやすらかに横たわることができるように、ネイリストさんたちが整えてきてくれていたのだと思う。

新しく買ってみたマニキュアの、グレーみがかかったグリーンで、ごく小さいゴールドのラメが混ざっている色が気に入って、しばらくはこれで過ごすのもいい、と思ってみたりしている。とはいうものの、根がずぼらでがさつなわたしは、やわになってちぎれやすく、はがれやすくなった爪先の、面倒をていねいにみつづけるのがすぐにでもいやになってくるだろう。