耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2019年2月に読んだ本

エチュード春一番 第二曲 三日月のボレロ

荻原規子さんの小説とは小学生の頃からの付き合いで、新作も本屋さんで見つけ次第ちょこちょこと読んでいるのだけれど……、このシリーズ、読み終わって第3巻を検索したらなんと出版中止とネットで見て困惑。延期とかでなく中止とはこれいかに。せっかくヒロインとモノクロ男子(神)との絆もできてきたのに。

個人的には、荻原作品はこういう日常の中にあるファンタジーよりもがっつり浸れる作品の方が好きなので、また別の作品でも出会えたらなあと思います。

読了日:02月13日

 

ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像
ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)

ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)

 

 ロベスピエールもナポレオンも乗り越え、なんども権力から転落してはまた這い上がり、権力の趨勢を巧みに読みながら、遂にはトップに上り詰めた男。偉人となるには精神の崇高さが欠けすぎているが、世を読む才には長けていたのでしょう。偉大な男こそ生き延びるのがひどく困難な、革命後の世界。もしフーシェが同時代の同国の政治家だったなら、怒りと嫌悪が爆発するところでしょうが、こうして時間を超えて彼の人生を語られてみると、二転三転しながらも窮地を脱出するダークヒーローを思わず応援しながら読んでしまっている自分に気がつきます。

読了日:02月16日

 

武道館
武道館 (文春文庫)

武道館 (文春文庫)

 

題材には関心があるし、伝えてくるメッセージにも本当に、そうだよね、と言えるのだけど、どうしてもこの小説世界にのめり込むことができなくて、たぶんそれは、この小説が伝えてくる人生の課題へのヒントも、それからこの小説が取り上げているアイドルというポジションの不可解さに対しても、わたしが心の整理をつけたことが、すこしだけ過去になってしまっていることがあると思う。そういう意味ではいまのわたしにはそぐわなかったということなのだろう。本には積みすぎてごめんね、と言いたい。

読了日:02月20日

 

コンビニ人間 
コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 児童書を読んでいた子ども時代のように、読みながらちょっとワクワクしてしまった。主人公が新しい世界に飛び込み、世界のルールを少しずつ学んで、果たしてうまく生き残っていけるのか…。会話が絶妙に噛み合わないけど、そこにはせつなさよりもおかしみがあり、それどころか小気味好くさえある。主人公の彼女が人間になろうとするのはあくまでサバイバルのためで、感情面では一切動じていないあたりはむしろ強者だ、と思ってしまう。極端なキャラクターのようなのに、どこにでもいそうで、もしかしたら自分でもあるような、リアリティのバランス。

読了日:02月21日

 

伴侶の偏差値
伴侶の偏差値 (小学館文庫)

伴侶の偏差値 (小学館文庫)

 

 都会に暮らす妙齢の女性が自分の人生の行く末に悩み、女友達に嫉妬するというよくある題材のものかと思いきや、東日本震災を機に周囲も含めて価値観が揺れ動き、それでいて自分自身の本質は何も変われずにいるさまが浮かび上がる。もしかすると自分自身の生き方や在り方にたいしてこれでいいのか…と悩んでいる人がいたらヒントにはなる小説かもしれないな、と思うけれど、震災前後にどこかで聞いただれかの思考を繋ぎ合わせたように感じてしまった。

読了日:02月23日

 

 緑衣の女
緑衣の女 (創元推理文庫)

緑衣の女 (創元推理文庫)

 

 身近な者を殴り、殴られ、声にならない叫びが凍り付いた海の上の灰色の空気の中へ消えていく。おそらくは最低限の生活をするだけでも冷たく、肌が切れるように痛い日々。そうした環境の中で生まれた小説がこういった辛く重い空気を纏っているのは必然のようにも思える。貧しく不安定だった社会が少しずつでも前進していることは感じ取れるにせよ、DVやドラッグの問題が、自分たち自身で訴え、変えていかなければならない喫緊の社会問題であるという著者の強い覚悟と決意が滲み出るかのようです。

解説を読んで初めて知ったけど、これはなんとアイスランドのミステリ小説だった。国全体の人口が約30万人程度と、わたしの生まれ育った日本のいち地方都市よりも少ない。これほどまでに小さな国に住み、その母語で小説を書く、というのはどんな気がするものなのだろうかと思わず考えてしまった。

読了日:02月28日

まとめ

2019年2月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1931ページ


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