耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2018年12月~2019年1月に読んだ本

 

エンデのメモ箱 (岩波現代文庫)

エンデのメモ箱 (岩波現代文庫)

 

 ものを考える時、近くのものに焦点を合わせずに遠い目をして眺めるように考えるほうが心地よいと思うことがある。説明する、ということに惹かれ、躍起になりすぎている感のあった近ごろ、芸術がそれそのものであるというのを愉しむという原点をまた思い出しました。論理はまた禁じられた境界を超える自己統制の技術でもあって、その美しさにも魅力されるのは逆説的ではあるけれども。
読了日:12月01日

  

フランス革命夜話 (中公文庫)

フランス革命夜話 (中公文庫)

 

フランス革命にまつわる短いエッセイ集。エッセイとして楽しんで読みながら、ちょっとしたウンチクのようなエピソードも知ることができて初心者向け……かと思いきや後半、「敗北者の運命」はロベスピエールの失脚にまつわる書籍(の一部)の抜粋翻訳らしく、次から次へと見知らぬ名前が続出するので、不勉強なわたしは読んであっけにとられてしまいました。

 読了日:12月06日

 

 

だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査

だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査

 

 同じ時代に同じ国に住む同じ世代の同性たち。同じ風俗習慣の中に生きるわたしたちのこだわりの、ほんのわずかな差異と一致。驚きと共感が乱反射する水面下の鱗を見ているみたいに時々きらめいて見える。読み終わってから、デパートのコスメカウンターで買い物をする頻度が急に増えてしまった。
 読了日:12月08日

 

 

日本のヤバい女の子

日本のヤバい女の子

 

 生身の女の子たちは「物語」の枠なんかに収まらない。たしかにわたしも、女の子たちのことを消費してしまうことがあるけど。それは堪えようもなく甘美でたのしいことでもあるけど。女の子たちには、そんなことには構わないエネルギーがある。自分で選択して、自分の人生を生きる。そしてできることなら、幸せでいてくれたら。ただ消費され、役割を押し付けられるだけでない、そのパワーにわたしたちはよりいっそう惹きつけられるのだから。もう二度と会わなくなったあの子のことを思い出す、そんな夜に読む本。
読了日:12月10日

 

  

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

 

 映画のシナリオを執筆中のミランダ・ジュライ自身が、フリーペーパーに広告を出している一般人に片っ端から会いに行くという、エッセイのようなノンフィクションのようなインタビュー集。切り分けたり分類することのできない、リアルな人生のざらっとした手ざわりに不思議と引き込まれていく。そうした人生を覗くことのようには、人生を変えることは容易ではない。

読了日:01月07日

  

 

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

 

 読了日:12月16日

マリー・アントワネット 下 (角川文庫)

マリー・アントワネット 下 (角川文庫)

 

読了日:01月11日

 ミュージカルの公演期間だったおかげで、今年の秋冬はマリー・アントワネットブームだった。舞台版が試みたように、現代社会にたいして感じていることを歴史の影を通して見つめなおそうとしているのだと思う。〈「民衆」という不思議な存在は、擬人的にしか、ものを考えられない。彼らの理解力が及ぶのは、概念に対してではなく、形姿に対してだ。そのため彼らは罪が存在していると感じれば、罪人を見ようとする。〉

本書は歴史的人物であるマリー・アントワネットに関し、一個人としての人物像を数々の資料から冷静に拾い集め、長所も短所も問わず、なるべく客観的にくまなく見つめようとする。そうした上でこそ、彼女の生涯、彼女の過失、彼女の本質、そして彼女とともに終焉を迎えた18世紀という時代の姿が確かな輪郭を取って見えてくる。重厚で壮麗な比喩表現は、繊細な花弁が幾層にも重なった薔薇のようにたたみかけ、内面の豊かさを導いてくれる気がする。とりわけ、彼女が苦悩から自己を発見する過程の内面に迫る記述は、何度読み返しても奮い立たせるような力を与えられるのだ。

 

 

孕むことば

孕むことば

 

 読了日:01月16日

 翻訳者の鴻巣さんが、妊娠と子育てを通してことばを再発見していくエッセイ。子を持ちたい、という強い欲を持っていなければ産まずに人生が済んでしまいそうだなどと思っていた今日このごろ。でも、子を育てるという行為は人生だけでなく自分の中のことばをも深く、豊かにしてくれるものなのだなあと思った。全体に淡々としたタッチだけれど、とはいえ産後軽いうつになったとか、『嵐が丘』翻訳のために一時は出産を諦める人生を覚悟したとかさらりと書かれているので、やはり尋常ではないことなのだろう。こういう文章を読むと、やはり試みもしないで過ごしてしまえば後悔するであろうという予感が拭えなくなる。

 

 

 読了日:01月24日 著者:荻原 規子

少女漫画を読むとき、わたしは登場人物の表情に注目して絵を眺めるのが好きなのだけれど、久々に荻原さんの小説を読んでその表情を想像するよろこびというものがあることを思い出した。モノクロのキャラクター設定がずるすぎる……美綾との掛け合いが『これは王国のかぎ』のひろみとハールーンを思い出させて楽しい。でもRDGのときといい、荻原作品では世界の幻想的な位相と現代的な生活がクロスする舞台設定がわたしはあまり好みではないので少しだけ残念だった(ハイ・ファンタジーの方が好き)。そういう小説の方が世の中では受け入れられやすいのかもしれないけど。

 

族長の秋 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

族長の秋 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

 

 いやらしくて、残酷で、身勝手で、滑稽な大統領。こんな人間が国家元首だったら地獄だし、身近にいるというだけだとしても運が悪い。だけど、読み終わって一番初めに抱いた思いは、彼を愛したい、愛すべき男だということ。虚偽の陰に隠れ、孤独の闇に絡め取られながら生きのびる痛み。決して彼がその主人になることができなかった水晶のために為す行動は、破天荒がゆえに寓話的にすら思え、突拍子もなくて神話を読んだときのような興奮を覚える。そう思えば複雑な文体からも、幾世代にも語り継がれる口頭伝承の風景が浮かんでくる気がした。
読了日:01月28日

 

 

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

 

 わたしの中にも、責めて怒っているだけで変わるのかと疑問に思う気持ちがないとはいえない。だけど気づかなくてはならない。男性だけでなくすべての人間が。やさしいことばで笑顔でなだめて、わかりあえるというのならそれでいい。だけどそれで何百年も気づかれなかったから。心が傷ついて、尊厳が奪われて、それが自然なことなのだと受け入れて、自分を縛った同じ鎖が自分の子どもも傷つける。チーム戦の勝敗を決めたって意味がない。ただわたしとあなたが一緒に住む未来の話をしたいだけ。傷ついたときに傷ついたと言える世界の。
読了日:01月30日

 

まとめ


2018年12月の読んだ本
読んだ本の数:5冊

2019年1月の読んだ本
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1758ページ

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