耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2018年7月に読んだ本

近況

記録的猛暑に天変地異、ただでさえ毎日ぐったりとしてしまう夏なのに、最近は毎日残業前提で仕事をすることになったので毎日眠い。夏休みはありません。小学生のわたしに教えたら絶望しそう。

それなのに8月頭に発売された『世界樹の迷宮X』というゲームにハマってしまった。お風呂に入らないとゲームができないマイルールなので、さっさと進めます。サッサッサッ

 

 

7月の読書メーター

読んだ本の数:7
読んだページ数:2105

 

りさ子のガチ恋? 俳優沼 (集英社文庫)

りさ子のガチ恋? 俳優沼 (集英社文庫)

 

モノを等価交換するための便利なシステムがお金なのだとして、愛を金銭に換算したらどれだけの桁数になることか。はたから見てそれがどんなに歪んだ搾取に思えても、本人たちが等価交換だと信じているなら何の口出しもできない。自分の人生を他人の利益に委ねてしまうことに苛立ちを感じても、果たしてそうした選択をしたことのない人がどれだけいるものか。
消費して消費され合う、いくらでも代わりのきく関係で、野心も欲望も見えない無自覚な翔太のような人間に一番得体の知れなさを感じる。
読了日:07月07日 著者:松澤 くれは

 

 

深き心の底より (PHP文庫)

深き心の底より (PHP文庫)

 

10年ほど前までに小川さんが各所に載せたエッセイをまとめたもの。新聞の記事も多かったこともあり、題材の古さや文章の幹に既視感を覚えるものの、短いながら抑制された文体にはっと胸を締めつけられること数回。

 読了日:07月09日 著者:小川 洋子

 

 

 「こういうのって、どんどんなかったことになってゆくんだ。」そんなことないよ。いや、そんなことはあるかもしれないけど、でも、そのこと自体はなかったことになったとしても、ひとつひとつが積み重なって一日になって、いつのまにかすごく遠いところにきている、と気づく。それを愛おしく思えるのは、それが生きてるってことだからと思うからで、もしかするとそれはとても暗い気持ちにさせる事実なのであるかもしれず、でも置いてかれても取り戻せなくても、少しずついろんなことを心に残して変わっていくしかわたしたちは方法を知らないのだから。
読了日:07月11日 著者:川上 未映子

 

消滅世界 (河出文庫)

消滅世界 (河出文庫)

 

 だれかを独占したいと望むのはみっともないと思うからひた隠しにして、隠すくらいならなくしてしまえば合理的だと一瞬考えるところまでは賛成できるのに、その後の世界のありさまに納得がいかないのは、そのみっともなさも嘔吐をもよおすほどの気持ちの悪さも含めて人間という生物でありたいと望んでいるからなのでしょうか。気味が悪い、でも愛おしい、相反する感情を抱えたわたしたちが少しでも生きやすい世界をと望むことすら怖くなる。でも、でもと言いたくなるうちはまだ安心できるのかもしれません。
読了日:07月12日 著者:村田沙耶香

 

 しあわせになりたいと口癖のように呟く。がんばらなくてもいい、別の世界なんて見えなくてもいい、置かれた場所が私にぴたりと合っているならなんて幸運だろう。けれどあらかじめ設計されたみんながみんなのためにある社会は、魅力的なのに気味が悪い。緩慢な生は死と同じなのでは?そう思うのも私が昔からずっと刷り込まれてきただれかの設計のせいなのか?「野人」の思考さえ支配しつくしているのはシェイクスピアの奔流。全てが疑わしい、その一方で既に私も、自分自身では永遠に気づけない思考停止をどこかで諦めているのだから。
読了日:07月27日 著者:オルダス・ハクスリー

 

停電の夜に (新潮文庫)

停電の夜に (新潮文庫)

 

米国在住インド系移民の女性作家とのことだが、背景を全く知らなくても存分に味わいがいのある、端正で繊細な作品だった。声高になにかを主張したりすることはなく、むしろ淡々と人生のエッセンスを描いていくといった短編集。

 読了日:07月27日 著者:ジュンパ ラヒリ

 

長い終わりが始まる (講談社文庫)

長い終わりが始まる (講談社文庫)

 

 山崎ナオコーラさんの文には、可愛らしい率直さとでもいうようなものがある。その可愛さは不器用さに近い。長い終わりのさなかにある甘い痛みは緩やかで心地よい。物語は大学生の恋愛を題材にしたものだが、先月『可愛い世の中』を読んだので、主人公の女の子の不器用なぶっきらぼうさは、現代の若い女性の在り方に沿ったもののように感じる。
読了日:07月28日 著者:山崎 ナオコーラ



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