6月は仕事で新しい役割を担う立場になり、キャパシティがいっぱいいっぱいになっていた月。平日の夜は気晴らしのため、大好きなミュージカル「エリザベート」のDVDや動画をずっと観ていました。影響されて読む本までハプスブルグ家に。
6月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2543
フランツ・ヨーゼフ: ハプスブルク「最後」の皇帝 (河出文庫)
- 作者: 江村洋
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/12/06
- メディア: 文庫
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永らえるというのは近しい人を見送り続けるということでもあるのだった。バラバラになった家族、錆びついた宮廷、そして不安定な多民族国家を抱え、18歳で即位してから86歳で亡くなる直前まで、早寝早起きして一日十時間もの公務を死の直前まで続けていたという生涯には驚嘆するほかない。沈没しかかった大船は、彼の逝去と同時に大事な楔が抜けたように音を立てて崩れ去った。自分が他の誰とも替わることのできない、かけがえのない人物だという自覚は、精神と肉体を支えるものなのかもしれない。
読了日:06月06日 著者:江村 洋
NHK-FMの青春アドベンチャーでやっていたときに聴いていたけれど、完全に内容を忘れ去っており、新しい気持ちで楽しんだ。解説によれば須賀さんはミュージカル「エリザベート」をウィーンで観ておられたとかで、舞台のシーンを彷彿とさせる場面も。マクシミリアン(フランツ・ヨーゼフの弟)がナポレオン2世との間の子だったという説が実際にあるのは驚きだった。Wikipediaにも書いてあるけど、信憑性は謎。まあ、日本でも義経=チンギス・ハーン説みたいなのあるしな……。伝説をフィクションとして消費するのはワクワクするものです。
本作は大公妃を一途な人柄の持ち主としてその若き純愛を描いた小説で、『フランツ・ヨーゼフ』本を読んだ直後だけに、その子マクシミリアンの後の運命を思うと胸が痛む。
読了日:06月09日 著者:須賀 しのぶ
人が人を思う気持ちは、その人が見ている世界に影響された影から生まれるものでしかない。それなのに、誰かの真実の姿を求める気持ちは、どうしてそんなに強く人を動かすのか。
途中で何度も読むのをやめようと思ったけど、それは見たくないものから目を逸らしているだけなのかもしれなくて、私がそうしたくなる人間であることを気づかされたことによってまたこの本を手に取ったことを後悔した。何のために本を読んでいるのかなんて自由なはずなのに、自分の中に潜んでいる後ろめたさみたいなものを突かれているようで辛かった。
読了日:06月16日 著者:窪 美澄
歴代ハプスブルグ家の女性たちのうち印象的なエピソードをピックアップして一般向け読み物としてまとめられた書籍。もちろんフランツ・ヨーゼフの母ゾフィや妻エリザベートの記述も。江村先生の本は、人物像が戯画的でありながらリアリティのある親しみのある文章で読みやすいと思う。ご多分に漏れず女傑マリア・テレジアに興味が湧く。
読了日:06月17日 著者:江村 洋
「そうだ、私は紳士として社会から扱われたい、という欲望があるのだ」
こんな文章に出会えるとは思っていなかった。なぜなら私も同じことを考えたことがあったから。この社会では女に生まれると、女である自分のままで、紳士として扱われることはできない。もちろん、女だからと可愛がられて得をしたことも何度でもある。ただ、自分の思われたいように思われるのはほとんど無理なのだ。作中の豆子は、自分なりに考えた結婚式の大失敗でそのことを悟る。でも、自分の考えたことを行動に移す人のことを、私は可愛いと思う。
自分の結婚式を挙げる前に読めてよかったと思う。婚姻というシステムよりも結婚式の意味に疑問を抱いているから。3万円を払って饗宴に来る客のための見世物なのか、親孝行のための寸劇なのか、それともわたしが信じたいように、それは本当にわたしの人生の節目の儀式なのか?少なくとも、結婚式はわたしの思想や決意表明を発表する場ではないのだろう。わたしの思想は、結婚式ではなく、わたしの生きざまに現れる。
読了日:06月17日 著者:山崎 ナオコーラ
「流蘇、君の窓から月が見えるかな?」
上海の文学に触れることそのものが私にとっては稀で、彼女らの置かれた社会的背景を理解するのには解説の助けを借りねばならなかったけれど、それはさて置いたとしても、鮮やかでコントラストの強い条件描写とともに、わたしは恋愛小説として堪能した。とりわけ、ただ愛するだけでは結ばれることができない、そういうわけにはいかない、という複雑な心情においては、現代社会の自立した若いおとなたちにも共感できるところがあるのではないか。
読了日:06月21日 著者:張 愛玲
寝る間も惜しんで読みふけった小説。これがハードボイルド小説の美的感覚かと新鮮な気持ちに。ただ、最近のわたしの読書傾向としてこういう、ストーリーがめっちゃおもしろい本を純粋な気持ちで愛することができなくなってしまったのだなと気づいて少し寂しかった。
読了日:06月24日 著者:早瀬 耕