耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2018年3月に読んだ本

3月も読書メーターさんにお世話になりました。
読んだ本の数:7
読んだページ数:2409

 

 

蜘蛛女のキス (集英社文庫)

蜘蛛女のキス (集英社文庫)

 

 刑務所で同室となった二人の会話のみで小説が構築されていく。会話というのは「いま、この瞬間」でしかないのにもかかわらず、言葉を受け取るという行為によって私たちは、その過去の記憶、イメージ、思想を、主観を通してその言葉に重ねる。私たちがだれかを理解したと思うのは直接的に語られた言葉からとは限らない。私の、そしてあなたの、本当の気持ち、というものが、全て真実でありながら永遠でもなく誰にも知られることなく消え去ってしまうことを知るほどに、この小説の切なさが沁みていく。
読了日:03月04日

 

 

王妃マルゴ〈上〉 (河出文庫)

王妃マルゴ〈上〉 (河出文庫)

 

読了日:03月11日

王妃マルゴ〈下〉 (河出文庫)

王妃マルゴ〈下〉 (河出文庫)

 

 息もつかせぬ展開で、主にフランスでのユグノー戦争を背景に、輪郭のくっきりとした登場人物たちの人間模様が描かれる。カトリーヌ・ド・メディシスを中心に渦巻く、兄弟間で王座をめぐる陰謀。政略結婚と婚外恋愛、騎士たちの友情。1572年のバルテルミーの虐殺以降の歴史の流れをつかむために読み始めたものの、おそらくは脚色が豊かになされており、すっかり歴史ロマンものの娯楽小説として楽しんでいました。

カトリーヌ・ド・メディシスが出て来る小説*1が読みたくて、Amazonマケプレからお取り寄せ。案の定、ヒロインより目立ちまくっている悪女カトリーヌ。萩尾望都さんの漫画*2も完結したら読む予定。

読了日:03月26日

 

 

 

ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

 

 人物像が極端なのと説明過剰なのがちょっと個人的には好みじゃなくて、栄利子も翔子も自分だったかもしれないとしみじみと実感できなかったのが残念だと思ったけど、とはいえ中盤以降、物凄い力で身をくねらせてもがく肉食魚みたいなこの小説を完成させるには、柚木さんのねじ伏せるような力量がないとダメだっただろうなあとも思う。それに、わたしたちのいる社会をこんなふうに書いてくれる人は他にいないので、これからも読み続ける作家さんです。
読了日:03月18日

 

 

劇場 (白水Uブックス)

劇場 (白水Uブックス)

 

わたしには飲酒をすると楽しくなるときと憂鬱になるときがあって、きのうはそんな夜だったのでブルガーコフの不条理さを喜劇的に描くユーモアに救われました。この作品が未完のままに終わってしまったことで幕切れのカタルシスが得られないのが惜しまれる。
読了日:03月24日

 

桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

 

彩瀬まるさんの本って本当に期待を裏切らないなあと思う。難しいことも特別なことも何も書いてない。ふつうの人のふつうの悩み、それなのに、それだからこそ、じんわりと目頭が熱くなる。私いつのまにか大人になってしまったんだなあって。
読了日:03月28日

 

 

英子の森 (河出文庫)

英子の森 (河出文庫)

 

薄々気づいていながら目をそらしていたことを、嫌味になるかならないかのすれすれのところで、ユーモアを交えて語る。なんとセンスの良い文章…などとしたり顔で感想を書くことすら、『博士と助手』を読むと恥ずかしくなってきますが。だってことばにしなくては無くなってしまうあれもこれもがいつか消えてなくなってしまうのが惜しかった。ヒントがなければ思い出にすらなりはしない。誰かの人生を変えてしまうかもなんて大それたことは思ってない。だからといって一番手を抜いちゃいけないところに手を抜き始めているのかもな、わたしたちは。
読了日:03月29日

 

 

*1:バルザックにもそのものずばり『カトリーヌ・ド・メディシス』という作品があるらしいのだが、文庫化されてない本はなかなか読み進められないのがつらいところ。

 

バルザック全集〈第23巻〉 (1975年)

バルザック全集〈第23巻〉 (1975年)

 

 

カトリーヌの若い頃の話を読んでみたいんですよね。小説はあきらめて、地道に歴史関連本を読むべきなのか…。

*2:

王妃マルゴ volume 1 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ volume 1 (愛蔵版コミックス)