耳をすますナツメグ

だれもみてない、ほら、いまのうち

2018年2月の読んだ本

年明けから読んでいた「ブーリン家の姉妹」シリーズ続刊にハマった2月。去年から録画しっぱなしの海外ドラマ「クイーン・メアリー」もシーズン2から視聴再開したし、ドロドロ昼ドラ系宮廷ロマンスばっかり摂取している。

 

しかし去年「レディ・ベス」や「怖い絵展」で≪ジェーン・グレイの処刑≫を見たときも思ったけれど、高校時代に世界史をまともに勉強していなかったのが今に至るまで趣味を楽しむ壁になっている。(「ブーリン家の姉妹」シリーズはかなり丹念に史実に沿ったストーリー展開をしているので、そのあたりは無知で挑んでもあんまり問題はないのだけれども)

 

時代背景をもうちょっと広く知ろうと手を出してみた『英国王室史話』『プロテスタンティズム』は初心者にも大変わかりやすく、広く浅く16世紀近辺のヨーロッパの雰囲気を知りたい人間としてはありがたかった本。とくに後者『プロテスタンティズム』は、キリスト教信仰の雰囲気が体感できてない、宗教革命に漠然としたイメージしか持ってない日本人の私からしてみるとかなりのお助け本だった。キリスト教カトリックプロテスタントに大きく二分されているのだ、と思っている人は読むと目からウロコが結構出るはず。

【2019年11月13日追記】これを書いたのをすっかり忘れていましたが、『プロテスタンティズム』著者の深井智朗氏は別の著作・論考にて不正行為を行っていたことが2019年5月に発覚しています。架空の神学者レーフラーなる人物をねつ造したことでツイッターなどではちょっとしたネタにもされていましたよね…。残念ながら、『プロテスタンティズム』の信用性も疑わしいものと考えざるを得ない状況です。ちなみに版元も出荷停止措置をとっているようです。

 

でもたぶん、私自身は歴史オタクの素質がないのだと思った…。歴史関連書籍を単体で楽しむのって、結構スキルがいる。つまり、淡々とした事実の羅列という素材から自分なりの人物像を頭の中で作り上げて萌える、というスキルが。小説・映画・ドラマ・漫画等のフィクションを入り口として経由しないと、歴史上の人物の出で立ちのようなものがどうしても頭に描くことができなくて、『英国王室史話』上巻もヘンリー8世以前は飛ばし読みになっている。『リチャード三世』を読んだときも思ったけど、同じ名前の人が多すぎるよー。

 

 

2月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1996

ブーリン家の姉妹  3 宮廷の愛人(上) (集英社文庫)ブーリン家の姉妹  3 宮廷の愛人(上) (集英社文庫)感想
このタイトルから期待できる全てが楽しめる小説。シリーズ二作目までとはちがうのは、読み手と物語世界をつなぐ語り手不在の群像劇となっている上、もっとも主要な人物であるエリザベスの心理が描写されない点。読者も彼女の取り巻きたちと同じように、表にあらわされた感情から読み取るしかない。どれが本心でどれがそうでないのかは想像の中。たぶんきっと女王本人にすら。
読了日:02月06日 著者:フィリッパ・グレゴリー
ブーリン家の姉妹  3 宮廷の愛人(下) (集英社文庫)ブーリン家の姉妹  3 宮廷の愛人(下) (集英社文庫)感想
この小説におけるエリザベスは、決して強い女としてのみ描かれているわけではない。突如大役に就いて1年か2年しか経っていない20代の一人の女性と思えばそれも当然だし、甚大なプレッシャーに耐えながら側近の力を借り女王として成長していく姿には親しみすら感じる。それでいて後半の展開では彼女の持ち前の賢さとしたたかがドラマを一気に動かす原動力となる。二人の側近セシルとダドリーの関係も、敵対心と友情が紙一重であることを感じさせる。その後数十年続く女王の治世にもまだドラマがあるのだろうなと思わせる幕切れ。
読了日:02月10日 著者:フィリッパ・グレゴリー
悪しき遺産 (上) ブーリン家の姉妹4 (集英社文庫)悪しき遺産 (上) ブーリン家の姉妹4 (集英社文庫)
読了日:02月18日 著者:フィリッパ グレゴリー
英国王室史話〈下〉 (中公文庫)英国王室史話〈下〉 (中公文庫)
読了日:02月18日 著者:森 護
悪しき遺産 (下) ブーリン家の姉妹4 (集英社文庫)悪しき遺産 (下) ブーリン家の姉妹4 (集英社文庫)感想
名前だけ知っていた二人の王妃の顔が見えたような気がします。アン・ブーリンとはちがい、本書のヒロインたちは生きる時代が違えば、無残な形で歴史に名を残すことはなかったことでしょう。老いたヘンリー王の描かれ方はまるっきり裸の王様で、客観的に見ればあきれるほど滑稽であり、憐れみすら誘います。ところが、本当のことを叫んだ子どもは処刑されてしまうのです。個人的な好みを言うとしたら、トーマス・ハワードを単純な悪人としてだけではなく、野心の理由を掘り下げてほしかったですが、話が散漫になりすぎるでしょうか。
読了日:02月21日 著者:フィリッパ グレゴリー
プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)感想
過去、宗教は支配と統一の手段として用いられてきたし、特にルター派の古プロテスタンティズムは支配者と結びつく性質から政治利用されてきた。だが著者は、それらの反省すらもアイデンティティに組み込み、他者との共存を図ることこそが現代のプロテスタンティズムの本質であるとする。一介の修道士ルターの素朴な懐疑がいくつもの反響を呼び、現代につながるドイツやアメリカの社会形成の根底をなしている。歴史的知識の参考のために読み始めたけれど、それのみならずドイツ・アメリカの現代社会の縮図をおおまかに知る一助ともなる読書でした。
読了日:02月27日 著者:深井 智朗

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